住宅ローンの返済が滞り、競売を避けたいと「任意売却」を検討している方へ。任意売却は、不動産を市場価格に近い形で売却し、債務整理を行う有効な手段となり得ますが、残念ながら、すべてのケースで任意売却が成功するわけではありません。
「もしかしたら、うちの状況は『任意売却できないケース』に当てはまるのでは…?」
そう不安に感じている方もいるのではないでしょうか?
本記事では、「任意売却できないケース」に焦点を当て、具体的な事例を8つ挙げ、それぞれの原因と、可能な限り解決するための対処法を詳しく解説します。
任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際、債権者(金融機関など)の同意を得て、任意で不動産を売却する方法です。
競売は、債権者が裁判所を通して強制的に不動産を売却する手続きであり、市場価格よりも大幅に低い価格で売却処分されることが多く、債務者には経済的・精神的に大きな負担が残ります。一方、任意売却は、債務者が自らの意思で不動産を市場に近い価格で売却し、その売却代金をローンの返済に充てる手続きです。
任意売却の最大のメリットは、競売よりも高い価格で売却できる可能性が高い点です。通常の不動産売買と同様に、市場の相場に基づいた価格で買い手を探すため、競売と比較して債務者に残る借金(残債)を減らすことができます。
また、売却時期や条件についても、ある程度債務者の意向が反映される余地があり、精神的な負担も軽減されます。
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任意売却ができないケース
任意売却ができないケースには、主に以下の8つのケースがあります。
- 競売手続きが進み時間がないケース
- 国や自治体に差し押さえられているケース
- オーバーローンのケース
- 共有者(相続人)の同意が得られないケース
- 連帯保証人の同意が得られないケース
- 債権者が任意売却を認めないケース
- 不動産会社の販売活動に問題があるケース
- 本人確認ができないケース
①競売手続きが進み時間がないケース
任意売却は、競売の開札日の前日までに完了させる必要があります。任意売却は、債権者への交渉に時間を要するため、開札日が迫っている場合、時間がなく任意売却ができないケースがあります。
任意売却ができる期間は、住宅ローンの滞納から概ね6ヶ月〜12ヶ月程度が目安です。
競売よりもメリットが大きい任意売却を選択するには、早めに任意売却専門の不動産会社に相談することが大切です。
②国や自治体に差し押さえられているケース
税金や国民健康保険料などを滞納すると、最終的に国や地方自治体(以下、公的機関)によって住宅が差し押さえられることがあります。この状態になると、通常の任意売却の手続きを進めることは非常に困難になります。
税金や保険料などの公的債権は、住宅ローンなどの一般的な私的債権よりも法律上の優先順位が高いとされています。つまり、競売や公売によって売却代金が得られた場合、まず公的債権が回収される仕組みになっています。
住宅ローンであれば債権者は通常、金融機関一社ですが、公的機関の差し押さえの場合、複数の税目や保険料の種類によって複数の債権者が存在する可能性があります。それぞれの債権者と個別に交渉し、同意を得る必要があるため、手続きが煩雑になります。
金融機関が任意売却に協力するのは、競売よりも高い価格で売却できる可能性があり、債権回収額を増やせるというメリットがあるからです。しかし、公的機関の場合、滞納分の回収が最優先であり、必ずしも高値売却を重視しない場合があります。また、任意売却に応じることで回収が遅れることを嫌う傾向もあります。
任意売却を進めるためには、原則として公的機関による差し押さえを解除してもらう必要があります。公的機関による差し押さえを解除してもらうためには、以下のいずれかの対応が必要となります。
滞納額の一括納付
最も確実な方法は、滞納している税金や保険料を全額一括で納付することです。これにより、差し押さえは解除され、通常の任意売却の手続きに進むことが可能になります。しかし、多くの場合、一括納付が困難であるために差し押さえに至っていると考えられます。
分割納付の交渉と解除の可能性
一括納付が難しい場合、公的機関と分割納付の交渉を行うことになります。ただし、分割納付が認められたとしても、差し押さえが直ちに解除されるとは限りません。完納の見込みが立つなど、一定の条件を満たす必要がある場合があります。
担保提供による解除
差し押さえられている不動産の代わりに、別の担保を提供することで差し押さえを解除してもらえる可能性があります。ただし、これも公的機関の判断によるため、認められるとは限りません。
国や自治体に住宅が差し押さえられた場合、その不動産は「公売」という手続きによって売却されることになります。公売にかけられた場合も、市場価格よりも低い価格で売却される可能性が高く、債務者に残債が残るリスクがあります。また、強制的な立ち退きとなる点も競売と同様です。
国や自治体に住宅を差し押さえられている状況では、任意売却は非常に困難です。まずは、滞納している税金や保険料の問題を解決し、差し押さえを解除してもらうことが最優先となります。
※「競売」と「公売」の違い
・競売:国税徴収法と地方税法に基づき、税務署や自治体が滞納税を回収する手続き
・公売:民事執行法に基づき、銀行や債権者が裁判所を通しておこなう手続き
③オーバーローンのケース
不動産の価値が、住宅ローンの残高やその他の残債務の総額を下回る状態(オーバーローン)の場合、任意売却ができない可能性があります。
金融機関は、担保である不動産を売却することで、できるだけ多くの債権を回収したいと考えています。しかし、オーバーローンのため、任意売却に応じても十分な回収が見込めないと判断されると、任意売却を認めず、型通りより強制的な競売を選択する可能性があります。
金融機関は、任意売却にかかる時間や手間、仲介手数料などを考慮し、競売の方がより多くの債権を回収できると判断した場合、任意売却に同意しないことがあります。金融機関も早期の解決を望むため、強硬な姿勢に出ることがあります。
④共有者(相続人)の同意が得られないケース
不動産が共有名義である場合、その売却には原則として共有者全員の同意が必要です。売却条件や価格に関して共有者間で意見が対立している場合、任意売却ができないケースがあります。
また、相続財産の分割協議や相続登記といった法的手続きが進行中の場合、その完了を待たなければ任意売却の手続きを進められないため、さらに時間がかかる可能性があります。
⑤連帯保証人の同意が得られないケース
住宅ローンを組む際、多くの場合、主債務者(実際にローンを借りる人)だけでなく、連帯保証人が設定されます。連帯保証人は、主債務者がローンの返済を滞った場合に、主債務者と全く同じ責任を負う立場の人です。
そのため、任意売却を行う際には、原則としてこの連帯保証人の同意が必要となり、同意が得られない場合、任意売却ができない可能性があります。
任意売却は、担保である不動産を売却し、その代金で住宅ローンの残債務を一部でも返済する手続きです。しかし、売却代金がローンの残債全額を賄えない場合、残った債務(残債)は依然として主債務者と連帯保証人が負うことになります。
連帯保証人の同意が得られず競売になった場合、一般的に任意売却よりも売却価格が低くなる可能性が高いため、結果的に連帯保証人の負担が増えることも考えられます。
同意が得られない場合は、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、連帯保証人に対して、任意売却の必要性、メリット・デメリット、売却条件などを丁寧に説明し、理解と同意を求めることが重要です。
⑥債権者が任意売却を認めないケース
債権者は自身の債権回収を最大限に行うことを目的としているため、必ずしも任意売却に同意するとは限りません。
例えば、任意売却では、市場価格に基づいた売却を目指しますが、物件の価値がローン残債を大幅に下回っている場合、債権者は任意売却に応じても十分な債権回収が見込めないと判断することがあります。競売の方が、手続きが迅速に進むなどの理由から、債権者にとって有利と判断される場合もあります。
他にも、金融機関や保証会社によっては、内部の方針として、一定の条件を満たす物件については任意売却ではなく、競売での回収を優先することがあります。
任意売却を成功させるカギは、債権者への交渉です。任意売却に強い弁護士や不動産会社のサポートを受け、適切な交渉を行うことが大切です。
⑦不動産会社の販売活動に問題があるケース
任意売却においては、通常の売却に加えて、債権者(金融機関や保証会社など)との密な連携と、その意向を尊重した売却活動が極めて重要になります。
債権者も、担保となっている不動産を一日でも早く、そして可能な限り高値で売却し、債権回収額を最大化することを強く望んでいます。早期に購入希望者が現れ、有利な条件で売却が成立することは、債権者にとっても損失を最小限に抑えるための重要な目標なのです。
そのため、債権者は不動産会社に対して、売却活動の方針や進捗状況について具体的な要望を伝え、定期的な報告を求めることがあります。債権者の期待に応じた売却活動が行われなかったり、必要な報告を怠ったりした場合、債権者からの信頼を失い、最悪のケースでは仲介業者の変更を指示されたり、任意売却の合意を撤回され、競売手続きへと移行してしまうリスクも生じます。
以下のような行為は、債権者から「売却活動を適切に行っていない」とみなされる可能性があります。
- 売却情報を広告掲載していない
物件情報を適切な媒体に掲載せず、購入希望者の目に触れる機会を積極的に作らない。 - 内覧希望への消極的な対応
購入希望者からの内覧希望に対し、日程調整に応じなかったり、理由もなく断ったりする。 - 価格交渉への不誠実な姿勢
購入希望者からの合理的な価格交渉に応じようとせず、高すぎる価格に固執する。 - 債権者への報告義務の懈怠
定期的な活動報告を怠ったり、重要な情報を適切に伝達しない。
このような場合は、依頼している不動産会社との契約を解除し、任意売却に強い不動産会社へ切り替えることをおすすめします。
⑧本人確認ができないケース
任意売却の手続きは、原則として担保権(抵当権など)が設定された不動産の登記上の所有者が行う必要があります。配偶者や親族であっても、所有者本人でなければ法的な手続きを進めることはできません。これは、通常の不動産売買契約においても同様であり、契約締結時には厳格な本人確認が行われるため、所有者本人でないことが判明した場合、契約は成立しません。
しかし、やむを得ない事情により、所有者本人が手続きに関与できない状況も想定されます。例えば、債務超過から逃れるために意図的に所在不明となっているケース、長期の病気療養により契約行為が困難なケース、あるいは認知症の発症などにより判断能力を喪失しているケースなどです。
このような特別なケースに限り、代理人を立てることで任意売却を進められる可能性があります。
代理人による手続きが認められる可能性のあるケース
- 認知症の場合
成年後見制度を利用し、家庭裁判所によって選任された成年後見人が、本人の財産管理・処分行為を代行することができます。成年後見人は、本人の意思を尊重しつつ、財産を守る観点から任意売却の手続きを進めることが可能です。 - 病気療養中の場合
法律知識を有し、任意売却の実情にも詳しい弁護士や司法書士などに任意売却の手続きを委任することが考えられます。この場合、司法書士が所有者のもとに赴き、本人確認と意思確認を行うなどの方法が取られることもあります。
ただし、いずれの場合も、債権者が代理人による任意売却を承諾することが大前提となります。債権者は、代理人の権限や本人の真意について慎重に判断するため、十分な説明と資料の提出が求められます。
例外:所有者本人が失踪中の場合
所有者本人が失踪しており、その意思確認ができない場合は、原則として第三者に任意売却の手続きを委任することはできません。当然、債権者も本人の意思が確認できない状況での任意売却を認めることはなく、最終的には法的な強制執行手続き、すなわち差し押さえと競売へと移行する可能性が高くなります。
このように、任意売却は所有者本人の意思に基づいて行われる手続きであり、本人の意思確認が極めて重要です。本人による手続きが困難な場合は、成年後見制度や専門家への委任といった手段が考えられますが、債権者の承諾が不可欠であることを理解しておく必要があります。
まとめ
任意売却は、競売よりも多くのメリットがある解決策ですが、成功させるためには専門的な知識と経験が不可欠です。本記事で挙げたようなケースに当てはまる場合でも、専門家のサポートを受けることで解決できる可能性は十分にあります。
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