任意売却をスムーズに進める鍵は、「適切なタイミングで必要な書類を揃えること」です。
この記事では、任意売却の開始から完了までの流れの中で必要になる書類と、任意売却の事前準備・売買契約書の概要などについて詳しく解説していきます。
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任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンの返済が困難になった際、融資元の金融機関(債権者)の合意を得て家を売却する手続きのことです。
通常、ローンの返済が滞り続けると、最終的に家は「競売」にかけられます。
競売は、本人の意思とは関係なく、裁判所によって強制的に手続きが進みます。
これに対し、任意売却は自分自身の意思で家を売却する方法です。
競売と任意売却の違いについては、以下の表の通りです。
| 競売 | 任意売却 | |
| 売却価格 | 市場価格の5割~7割 | 市場価格に近い金額 |
| 退去 | 強制的に退去の必要あり | 買主との交渉次第で引っ越しまでの猶予ができる |
| プライバシー | ✕(競売物件のサイトに掲載される) | 〇(周囲の人に知られにくい) |
| 引っ越し費用 | 全て自己負担 | 交渉可能(売却代金から捻出できる可能性あり) |
| 残りのローンの支払 | 原則的に一括請求 | 分割の交渉が可能 |
任意売却は、売却後の残債務を圧縮でき、引越し時期などの交渉余地も生まれる、債務者(売主)にとってメリットの多い選択肢といえます。
任意売却の必要書類
任意売却に必要な書類は、大きく3つです。
- 不動産の状況把握に必要な書類
- 債務・滞納状況の把握に必要な書類
- 契約・売却手続きに必要な書類
不動産の状況把握に必要な書類
これらの書類は、不動産会社が物件の法的制限、価値、適法性を正確に把握するために、相談時から必要となるものです。
| 書類名 | 取得先・補足 | 主な目的 |
| 売買契約書 | 購入時の保管書類 | 購入時の価格・条件を確認し、現在の市場価格と比較する。 |
| 重要事項説明書 | 購入時の保管書類 | 物件の法的制限、設備状況、管理状況などを確認する。 |
| 建築確認済証および検査済証 | 建築会社、役所 | 建物が建築基準法に適法であることを証明する。 |
| 図面・間取り図、測量図など | 建築会社、法務局 | 物件の形状や面積を確定させ、買主への情報提供に用いる。 |
| マンションの管理規約、使用細則 | 管理会社 | ペット飼育の可否、修繕積立金の状況など、マンションのルールを確認する。 |
債務・滞納状況の把握に必要な書類
任意売却の核心である、債権者との交渉に必須となる書類です。
債務額や滞納状況を正確に把握するために、初回相談時から手元にあるものをすべてご用意ください。
| 書類名 | 取得先・補足 | 主な目的 |
| 住宅ローンの返済予定表(残高が分かるもの) | 金融機関(Web閲覧が可能な場合もある) | 現在の正確な残債務額を確認する。 |
| 金融機関からの督促状、催告書 | 金融機関から送付された書類 | 滞納がいつから始まり、現在いくら滞納しているかの状況を正確に把握する。 |
| 裁判所からの通知書(競売開始決定通知書など) | 裁判所から送付された書類 | 競売開始決定の年月日を確認し、任意売却のタイムリミットを把握する。 |
| 固定資産税・都市計画税の納税通知書 | 自治体(市町村役場など) | 年間の税額を確認し、売却時の清算額を計算する。 |
| 税金の滞納に関する差押通知書 | 税務署など | 税金滞納による差押え(売却時に処理が必要な重要事項)の有無を確認する。 |
| 管理費・修繕積立金の明細書、滞納に関する通知書 | 管理会社(マンションの場合) | 管理費等の滞納額を確認する。 |
契約・売却手続きに必要な書類
不動産会社との媒介契約の締結や、最終的な所有権移転登記(売買完了時)に、本人確認と意思確認のために必要となる公的な書類です。
| 書類名 | 取得先・補足 | 主な目的 |
| 登記済権利証または登記識別情報通知 | 法務局、購入時の保管書類 | 不動産の所有権が売主様にあることを証明する。(紛失時は司法書士へ相談) |
| 印鑑証明書 | 市町村役場(発行から3ヶ月以内のものが必要) | 実印が本人のものであることを公的に証明する。 |
| 住民票の写し | 市町村役場 | 戸籍や現在の住所を確認する。 |
| 身分証明書 | 運転免許証、マイナンバーカードなど(顔写真付き) | 契約時の本人確認を行う。 |
| 実印 | 契約時の押印に使用 | 媒介契約書や売買契約書など、重要な書類への押印に必要。 |
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任意売却における売買契約書の特徴
任意売却における売買契約書の特徴は、通常の不動産売買で記載される基本的な内容に加えて、任意売却ならではの特約・免責事項が記載されている点です。
以下で、それぞれの概要をご説明します。
任意売却における売買契約書の基本的な内容
任意売却の売買契約書における基本的な内容は以下の通りです。
- 売買物件の表示(所在地、面積など)
- 売買代金、手付金、残代金の額と支払時期
- 所有権移転と引渡しの時期
- 公租公課(固定資産税など)の清算方法
- 売買契約解除に関する事項
任意売却とはいっても、所有する不動産を売るという点では通常の不動産売買と同様であるため、上記の内容はごくベーシックなものといえます。
任意売却ならではの特約・免責事項に注意
任意売却ならではの代表的な特約・免責事項は、以下の4つです。
- 債権者の同意に関する特約(停止条件)
- 契約不適合責任の免責
- 引渡猶予に関する特約
- 売買代金からの諸費用(引越費用等)控除に関する特約
債権者の同意に関する特約(停止条件)
債権者の同意に関する特約は、「お金を貸している金融機関や保証会社などの債権者全員が”この条件で売ってOK”と同意しなければ、この売買契約はすべて白紙(無効)にする」旨の特約です。
この特約を盛り込んでおくことで、債権者が任意売却に同意しない場合は、任意売却の契約そのものが白紙になります。
そのため、買主から「契約したのになぜ売ってくれないのか、違約金を払え」という要求を防ぐことができるのです。
契約不適合責任の免責
契約不適合責任の免責は、「家を売った後、その家に欠陥や不具合などがあっても売主は修理代などを一切払わなくてよい」旨の免責事項です。
任意売却の場合、もしも物件に欠陥や不具合があっても、売主が補修にかかる費用を捻出するのが難しいケースが一般的です。
そのため、「売主は契約不適合責任を一切負わない」という免責特約が入るのが通例であり、これは買主にも十分に説明されます。
引渡猶予に関する特約
引渡猶予に関する特約は、「売れたら即退去ではなく、いつ家を引き渡すかを買主と話し合って決めることができる」旨の特約です。
これにより、競売のように強制的に追い出されるのを防ぎ、新居探しや引っ越し準備の時間を確保できます。
売買代金からの諸費用(引越費用等)控除に関する特約
売買代金からの諸費用(引越費用等)控除に関する特約は、「売れたお金の中から売主の引越費用として数十万円を確保できるよう、債権者の許可をもらう」旨の特約です。
これにより、任意売却後に売主が新居に引っ越すための費用を確保できます。
ここでご紹介した特約・免責事項のほか、任意売却ならではの内容は多岐にわたります。
任意売却で不利益を被らないよう、売買契約書の内容はしっかりと確認することが大切です。
任意売却の必要書類に関するQ&A
最後に、任意売却の必要書類についてよくある疑問に対し、Q&A形式でお答えしていきます。
- Q1. 任意売却はどのような流れで進みますか?
- Q2. 書類の準備はいつ頃から始めればいいですか?
- Q3. 権利証をなくしてしまったのですが、任意売却はできますか?
- Q4. マンションの一室でも任意売却できますか?
- Q5. 離婚や相続が関係している場合、追加で必要な書類はありますか?
- Q6. 夫婦で共有名義にしています。書類は二人分必要ですか?
- Q7. 本人ではない家族が書類の準備や交渉を代行できますか?
Q1. 任意売却はどのように進みますか?
A. おおよそ以下のような流れで進みます。
▼任意売却の流れ
- 不動産会社への相談~媒介契約締結
住宅ローンの支払いが困難な債務者が任意売却の専門業者へ相談し、媒介契約を締結する。 - 不動産会社が債権者との交渉を行う
業者が物件を査定のうえお金の貸主(債権者)へ連絡し、「任意売却させてほしい」と交渉する。 - 不動産会社による販売活動
債権者が合意した価格で、一般的な不動産として依頼された家を売り出す。 - 買主決定・最終同意
購入希望者が見つかり次第、売買契約を結ぶ。
※この段階で「売買代金を誰にいくら配分するかの計画書(配分案)」を作成し、すべての債権者から最終同意を得る。 - 【決済】売却・清算
決済日(引渡日)に買主から売買代金を受け取り、お金で各債権者へ一斉に返済して家の抵当権や差押えをすべて抹消する。 - 【完了後】残債務の処理
売却しても残った借金(残債務)が確定する。債権者(または債権回収会社)と話し合い、無理のない金額(例:月5千円~3万円程度)での分割返済をスタートする。
なお、上記の一連の流れが完了するまでは3ヶ月~6ヶ月程度を要することが一般的です。
ただし、任意売却は「競売開札日の前日」までに売買契約を成立させて代金決済まで終える必要があるため、可能な限り日数に余裕を持って進めることが必要があります。
Q2. 任意売却の書類はいつ頃から準備すればいいですか?
A. 理想は「返済が苦しい」と感じ始めた時点、遅くとも「1回でも滞納した」時点ですぐに準備を始めてください。
特に、「ローンの返済予定表(残高が分かるもの)」と「金融機関や裁判所からの通知書」は、専門業者への相談時に現状把握のために不可欠です。
他の書類も、いざという時に慌てないよう保管場所を確認しておきましょう。
Q3.権利証をなくしてしまったのですが、任意売却はできますか?
A. 権利証(登記済権利証もしくは登記識別情報通知)を紛失していても任意売却は可能です。
任意売却において権利証は必要不可欠な書類ですが、紛失してしまっている場合は、司法書士が「本人確認情報」を作成するか、法務局が行う本人確認の制度である「事前通知」を利用することで、紛失した権利証の代替となります。
また権利証以外の紛失物であっても、物件購入時の不動産会社や市区町村の役所など、書類の発行元に問い合わせることで代替や再発行の手続きが可能なことがほとんどです。
不安な場合は、任意売却を依頼する不動産会社に「書類が足りないかもしれない」と正直に相談し、指示を仰ぎましょう。
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Q4. マンションの一室も任意売却できますか?
A. はい、もちろん可能です。
ただし、マンション特有の注意点として「管理費・修繕積立金」の滞納には注意が必要です。
もしこれを滞納している場合、その滞納金も売却代金から清算する必要があり、管理組合も交渉相手に加わります。
不動産会社に任意売却を相談する際は、相談時に必ず管理費の滞納状況が分かる書類(通知書や明細書)も持参しましょう。
Q5. 離婚や相続が関係している場合、追加で必要な書類はありますか?
A. はい、離婚・相続それぞれに追加で必要な書類が存在します。
まず離婚の場合、「名字が変わった」「住所が変わった」「財産分与で所有権を移転したい」などの事情があることが多いため、現在の登記情報と売主の状況をつなぐ書類(戸籍・附票)、また元配偶者の同意書が必要です。
相続が関係する場合は、相続人を確定させるための戸籍類(亡くなった方の戸籍謄本や相続人全員の戸籍謄本・印鑑証明書など)と遺産分割協議書が必要になります。
しかし、これらの書類を全て自分で集めるのは相応の手間が必要になる上、慌ただしさから書類の不備や抜け漏れにつながる可能性もあります。
書類の紛失時の対応でもお伝えしましたが、任意売却を依頼する不動産会社に離婚や相続など自身の状況を正確に伝えた上で、集める書類の種類やその方法を相談しましょう。
Q6. 夫婦で共有名義にしています。書類は二人分必要ですか?
A. 不動産の売却には所有者全員の同意が必要になるため、ご夫婦の共有名義の家を任意売却する場合は2人分の書類が必要になります。
必要となる書類は、それぞれの身分証明書、住民票、印鑑証明書と実印です。
住民票と印鑑証明書は発行から3ヶ月以内のものが求められるため、不動産会社との面談の日時から逆算し、事前に2人分用意しておくことをおすすめします。
Q7. 本人ではない家族が書類の準備や交渉を代行できますか?
A. はい、可能です。
売主本人から家族などに委任状が渡されている場合、書類の取得や不動産会社や債権者とのやり取りなど、任意売却を進めるに当たって必要な手続きを代行することができます。
ただし、売買契約当日に行われる実印の押印や売買契約書への署名については、原則的に本人しかできないため、この点は留意しておきましょう。
まとめ
任意売却の場合、通常の不動産売買と比べて、多くの書類が必要です。
「専門的なことはわからない…」「ここに記載されている必要書類が手元にない…」と不安を覚えることもあるかと思いますが、任意売却を専門に取り扱う不動産会社に早めに相談することで、万全のサポートのもとスムーズに任意売却を進めていけます。
当社センチュリー21中央プロパティーには、これまで多くの任意売却を成功に導いてきた実績があります。
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弁護士相談費用や仲介手数料など、売却に伴う費用は一切ございませんので、ぜひお気軽にご相談ください。