税金の滞納が長期間に及ぶと、国や地方自治体によって大切な財産(不動産など)が差し押さえられ、「公売」という手続きで強制的に売却される可能性があります。
この「公売」と、住宅ローン等の滞納が原因で手続きされる「競売」は、どちらも所有者の意図に関わらず財産が強制的に換価される点で似ていますが、その実施主体や手続きには重要な違いが存在し、しばしば混同されがちです。
本記事では、公売と競売の決定的な違いを様々な側面から詳細に比較解説します。
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目次
公売とは
公売とは、国や地方公共団体などの公的機関が、税金や社会保険料などの滞納によって差し押さえた財産を換価(金銭に換えること)するために行う売却手続きです。
公売については、主に国税徴収法および地方税法に規定されています。
これらの法律に基づき、税務署長または地方公共団体の長は、滞納者の財産を差し押さえ、その差し押さえた財産を金銭に換えて滞納された税金に充当する権限を有します(国税徴収法第62条以下、地方税法第16条の9以下)。
公売は、この換価手続きの主要な手段として位置づけられています。
公売の対象になる財産とならない財産
公売は、滞納された税金を回収するための重要な手段ですが、滞納者の人権や生活保障にも配慮し、法律によって差し押さえ・公売が禁止されている財産が存在します。
公売の対象になる財産
- 土地
- 建物(住宅、アパート、店舗など)
- 自動車
- 貴金属、宝石、時計、ブランド品
- 美術品、骨董品
- 有価証券(株式、投資信託など)
- ゴルフ会員権
- 債権(売掛金、給与、預貯金など)
公売の対象にならないもの
- 生活に不可欠なもの
衣類、寝具、家具、3ヶ月分の食料や燃料、義手や義足など。 - 職業に必要なもの
農業を営む人の農機具や肥料、家畜など。 - 信仰に関わるもの
仏像、位牌など、祭祀に必要なもの。 - その他の生活必需品
消防用の器械や避難器具など、災害時に必要となるもの。
公売に参加できる人
原則として、成年被後見人、被保佐人、破産者等、一定の欠格事由に該当する者を除き、誰でも公売に参加することができます。
これは、広く一般に買い受ける機会を提供することで、より適正な価格での換価を目指すためです。
競売とは
競売とは、主に民間の債権者(金融機関など)が、債務者に対して借入金の返済を滞納した場合などに、裁判所の決定に基づいて債務者の財産(主に不動産)を差し押さえ、その財産を換価して債権の回収を図るための売却手続きです。
裁判所が主導して行われます。
競売は、実は大きく分けて担保不動産競売と強制競売の二つに分けられます。
①担保不動産競売とは
担保不動産競売とは、不動産に設定された抵当権などの担保権の実行を指します。
住宅ローンや不動産担保ローンなど、あらかじめ不動産を担保にしてお金を借りた場合、その返済が滞ると、債権者は担保権に基づいて不動産を競売にかけることができます。
この場合、裁判の判決などの「債務名義」は不要です。
担保不動産競売では、抵当権などが設定された特定の不動産のみが対象となります。
②強制競売とは
強制競売とは、裁判所の債務名義に基づいた強制執行を指します。
不動産に抵当権が設定されていない場合でも、債務者が借金の返済を怠ったときに、債権者が裁判を起こし、確定判決、和解調書、公正証書などの「債務名義」を得ることで、債務者の不動産を差し押さえて競売にかけることができます。
住宅ローン以外の借金(消費者金融からの借入、未払いの慰謝料や養育費など)が原因となるケースが多いです。
強制競売では、債務者が所有するすべての不動産(抵当権の有無を問わない)が対象となり得ます。
公売と競売の違い
公売と競売は、どちらも差し押さえた財産を金銭に換える手続きですが、その根拠となる法令、目的、実施機関が大きく異なります。
公売は「行政」が「税金」を徴収するための手続きです。
競売は「裁判所」が「民間(や個人)の債権」を回収するための手続きです。
以下に公売と競売の違いをまとめました。
| 公売(こうばい) | 競売(けいばい) | |
| 実施機関 | 国税庁(税務署)、地方公共団体など(行政機関) | 裁判所(主に地方裁判所) |
| 手続き根拠法 | 国税徴収法、地方税法など | 民事執行法 |
| 実施目的 | 税金や社会保険料などの公租公課の滞納処分、換価 | 債権者による債権回収(担保権の実行など)のための換価 |
| 対象となる財産 | 不動産、自動車、動産(美術品、骨董品など)、有価証券など幅広い | 主に不動産。その他、船舶、自動車、債権なども対象 |
| 売却方法 | 期間入札、期日入札、せり売など | 期間入札(一般競争入札) |
| 入札の参加者 | 原則として誰でも参加可能 | 原則として誰でも参加可能(一定の制限あり) |
| 物件情報の閲覧 | 実施機関のウェブサイト、広報誌など | 裁判所の物件明細書、現況調査報告書、評価書(いわゆる「3点セット」)、不動産競売物件情報サイト(BIT)など |
| 手続きの開始 | 差押え後、行政機関の判断で実施 | 債権者の申立てにより裁判所が開始決定する |
| 買受人の代金納付 | 比較的短い期間(数日〜1週間程度) | 原則として納付期限までに一括納付(約1ヶ月以内) |
| 滞納者・債務者 | 税金等の滞納者 | 住宅ローン等を返済できない債務者 |
公売と競売の手続きの流れの違い
公売と競売の手続きの流れは、以下の通りです。
| 手続きの段階 | 公売(行政処分) | 競売(司法処分) |
|---|---|---|
| ① 滞納・債務不履行 | 税金・保険料などの滞納 | 借金・ローンなどの不履行 |
| ② 差し押さえ | 行政機関(税務署・自治体)が差し押さえ | 裁判所の許可を得て差し押さえ |
| ③ 売却手続き開始 | 行政が公売公告を出し、売却準備 | 債権者が裁判所に競売申立て、競売開始決定を得る |
| ④ 評価・公告 | 市町村や税務署が簡易に評価、公売公告を出す | 不動産鑑定士による評価 → 裁判所が競売公告を出す |
| ⑤ 入札・売却 | 入札またはインターネット公売 | 裁判所の競売で入札(期間入札が一般的) |
| ⑥ 売却決定 | 最高額入札者に売却 → 所有権移転手続きへ | 裁判所が売却許可決定 → 買受人が代金納付で所有権取得 |
| ⑦ 債務回収 | 税金等に充当し、残額があれば本人に返金 | 債権者へ配当 → 残額があれば債務者に返還される |
公売の特徴的な点
- 裁判所を通さないため、比較的迅速に進む(数ヶ月で終わることも)
- 不動産以外に、自動車や動産も対象になりやすい
- 公売情報は「官公庁オークション」「市町村のHP」などで告知
- 調査・鑑定が簡易なため、安く出品される場合がある
競売の特徴的な点
- 手続きが厳格で、開始から落札まで1年近くかかるのが一般的
- 不動産鑑定士の評価書・現況調査報告書・物件明細書が添付され、情報が詳細に出る
- 売却後は、買受人が裁判所に代金を納付し、所有権移転登記も裁判所が行う
- 競売の公告は「BIT(不動産競売物件情報サイト)」に掲載される
公売・競売のご相談ならセンチュリー21中央プロパティー
公売と競売は、どちらも差し押さえられた不動産を強制的に売却する手続きですが、実施主体(行政機関か裁判所か)、根拠となる法律、そして売却完了までの期間に大きな違いがあります。
もし、税金や住宅ローンの支払いが難しくなり、ご自宅が差し押さえられた、あるいは競売開始決定通知が届いた、という状況であれば、任意売却を検討できる可能性があります。
センチュリー21中央プロパティーは、公売・競売の取り下げに強い常駐の社内弁護士が在籍しています。弁護士だからこそできる圧倒的な交渉力で、期限までに確実な任意売却を実現します。
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