親族間売買とは、住宅ローン返済に困窮した場合に家を親に買い取ってもらうなど、家族や親族の間での不動産売買のことです。
この記事では、不動産の親族間売買とは何か、そのメリット・デメリットから具体的な流れ、また住宅ローンの問題まで詳しく解説していきます。
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目次
不動産の親族間売買とは?
不動産の親族間売買とは、その名の通り、親子や兄弟姉妹、祖父母といった親族の間で土地や建物を売買することを指します。
法的には、売買の相手が親族であっても第三者であっても、売買契約そのものの扱いは同じです。
しかし、税金や融資を利用する場合は金融機関の審査などにおいて、第三者間の取引とは異なる扱いがなされることがあります。
親族間売買は何親等までを指す?
親族間売買という言葉自体に、何親等までという法律上の定義はありません。
不動産取引において重要となるのは、民法上の定義よりも税制上の特例と住宅ローンの審査において「特別な関係者」として扱われる範囲です。
例えば税制面では、マイホーム売却時の「3,000万円特別控除」が使えない相手として、配偶者、直系血族(親、子、祖父母、孫など)、生計を一つにする親族などが定められています。
また住宅ローン審査では、金融機関が独自に親族間売買とみなす範囲を定めており、その範囲内での取引は原則融資NGとしているケースも多く見られます。
このように、何親等かという形式的な括りよりも、「誰との取引か」によって税制やローンの可否が変わってくるのが親族間売買の大きな特徴です。
【親族間売買の特徴】住宅ローン返済に困った場合に利用するケースが多い
親族間売買が検討される代表的なケースの一つに、「住宅ローンの返済困窮」があります。
病気や失業、離婚などで住宅ローンの返済が困難になった場合、そのまま滞納を続けると金融機関によって家が差し押さえられ、競売にかけられてしまいます。
そのため、ローンの滞納や差し押さえに至る前に、親族間売買として親に家を買い取ってもらうというケースが発生するのです。
住宅ローン以外では、「親が住まなくなった家を購入したい」「相続対策として家を売買したい」といった理由から親族間売買に至る場合もあります。
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親族間売買のメリット
親族間売買には、以下のようなメリットが存在します。
- 売買の内容をスムーズに決定できる
- 第三者との売買に比べて心理的なハードルが低い
- 実質的に不動産を手放さなくてよくなる
売買の内容をスムーズに決定できる
第三者との売買では、価格交渉だけでなく、内覧の日程調整、引き渡し時期、室内に残す設備の扱いなど、細かな条件交渉が難航することがあります。
しかし、気心が知れている親族の間柄であれば、価格や引き渡し時期などの条件について融通を利かせやすく、話し合いがスムーズに進む可能性が高いでしょう。
第三者との売買に比べて心理的なハードルが低い
家に対する愛着や、他人が内覧に入る気恥ずかしさなどの心理的なハードルは、不動産売却において意外に大きなストレスとなります。
親族間売買であれば、売る当事者も買う当事者も身内です。
そのため、売却に対する心理的な抵抗感が少なく、安心して取引を進められる点は大きなメリットといえます。
実質的に不動産を手放さなくてよくなる
先述の住宅ローン困窮のケースのように、経済的な事情で一度は家を手放さざるを得ない状況でも、親族が買い取ってくれることで一族としてはその不動産を保持し続けることができます。
例えば、子が親に家を買い取ってもらい、自身は家賃を親に支払いながら住み続ける「リースバック」のような形を取ることも可能です。
また、場合によっては無償で不動産を貸し借りする「使用貸借」という形で住み続けるケースも存在します。
これにより、不動産の所有権が売却先の親族に移っても、実質的に自分の(あるいは一族の)財産として手放さずに活用できるのです。
親族間売買のデメリット
一方で、親族間売買には一般的な取引にはない、以下のようなデメリットが存在します。
- 贈与税が課される場合がある
- 税制上の特例が適用されない場合がある
- 住宅ローンの審査が厳しい
贈与税が課される場合がある
親族間売買で最も注意すべき点が、「みなし贈与」のリスクです。
「身内だから」と市場価格よりも著しく安い金額で売買した場合、税務署は実質的には売買ではなく贈与であると判断します。
例えば、市場価格8,000万円の家を親子間で1,000万円で売買したとします。
この場合、市場価格との差額である7,000万円分は「親から子へ贈与された」とみなされ、買主である子に対して高額な贈与税が課される可能性があるのです。
贈与税は通常の所得税などより税率が非常に高いため、このみなし贈与のリスクは非常に大きなものといえます。
税制上の特例が適用されない場合がある
不動産売買には、税負担を軽減するための様々な特例制度がありますが、親族間売買ではこれらの多くが利用できません。代表的なものは以下の2つです。
- 売主側:居住用財産の3,000万円特別控除
マイホームを売却して利益(譲渡所得)が出た場合、最高3,000万円まで利益から控除できる強力な特例。この特例は「親子や夫婦、生計を一つにする親族」など、特別な関係にある人への売却には適用できない。 - 買主側:住宅ローン控除(住宅ローン減税)
買主が住宅ローンを利用して家を買った場合、年末のローン残高に応じて所得税などが控除される制度。これも「売主が生計を一つにする親族」である場合や、売買の前後で同居していた場合などには適用が認められないケースがある。
これらの特例が使えないことで、第三者との取引に比べて税負担が重くなる可能性があります。
住宅ローンの審査が厳しい
親族間売買で住宅ローンを利用するのは非常に困難です。
メガバンクやネット銀行の多くは、親族間売買というだけで融資を原則NGとしています。
▼金融機関が親族間売買に融資をしない理由
- みなし贈与の疑い
本来は贈与であるものを「住宅ローン」という名目で金融機関からお金を引き出すこと(資金使途違反)を警戒するため - 売買価格の妥当性
親族間で恣意的に価格が設定されやすく不動産の適正な担保価値(=融資額の根拠)が見えにくいため - 資金使途の不透明さ
買主(子)が借りた住宅ローンが売主(親)の事業資金や借金返済に流用されるリスクを懸念するため
これらの理由により、金融機関にとって親族間売買は不正利用のリスクが非常に高い取引とみなされてしまうのです。
親族間売買の注意点
親族間売買をトラブルなく成功させるためには、以下の3点を徹底することが不可欠です。
- 適正価格で売買する
- 売買の際は親族であっても契約書を作成し締結する
- 専門の不動産業者などに相談しながら進める
注意点①適正価格で売買する
親族間売買では、みなし贈与と認定され、高額な贈与税を課されるリスクを避けるため、客観的な適正価格で売買取り引きをおこなうことが重要です。
明確な定義はありませんが、一般的に「市場価格の80%程度」が一つの目安とされることもあります。
しかし、税務署に指摘された際に「なぜこの価格なのか」を合理的に説明できる根拠が必要です。
安全策としては、有料にはなりますが不動産鑑定士による「鑑定評価書」を取得するのが最も確実です。
また、複数の不動産会社による査定書も客観的な根拠資料となり得ます。
注意点②売買の際は親族であっても契約書を作成する
親族同士であっても、口約束のみで売買を済ませてしまうことで、以下のようなトラブルの原因となります。
- 後になって「言った」「言わない」のトラブルになる
- 法務局での登記手続きができない
- 税務署に「贈与」とみなされる
- 住宅ローンの審査が通らない
こうした自体を避けるためにも、必ず司法書士や不動産会社に依頼し、法的に有効な「不動産売買契約書」を作成・締結してください。
注意点③専門の不動産業者などに相談しながら進める
親族間売買を進める際には、多くの専門知識(税務、法律、金融)が必要になります。
そのため、親族間売買の取り扱い経験が豊富な不動産会社や、司法書士、税理士といった専門家に最初から相談し、仲介してもらうことを強くおすすめします。
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親族間売買で住宅ローンを利用するための条件は?
親族間売買での住宅ローン審査は非常に厳しいものの、ゼロではありません。
一般的に、信用金庫、地方銀行、またはフラット35(住宅金融支援機構)などは、メガバンクに比べて相談に応じてもらいやすいとされています。
融資を受けるためには、金融機関に対して「この売買は正当な取引であり不正の意図はない」という事実を証明するために、以下のような根拠や説明が必要です。
- 適正価格であることの証明
不動産鑑定評価書や複数の不動産会社による査定書を提出し、売買価格が妥当であることを客観的に示す。 - 売買の必要性の説明
「なぜ親族間で売買するのか」という理由を合理的に説明する必要がある(離婚による財産分与、住宅ローン返済困窮による売却、相続対策など)。 - 買主の返済能力
買主本人に十分な収入や信用情報があり、返済能力に問題がないことが前提となる - 買主と売主の生計が別であること
住宅ローン控除の観点からも、売主と買主が生計を共にしている(同居や仕送りがある)場合は、審査がさらに厳しくなる
これらの説明や証明には専門的な知見が必要になることも多いため、金融機関とのやり取りの前に親族間売買に詳しい不動産会社に相談するようにしましょう。
親族間売買の流れ
親族間売買は、不動産会社を介さず当事者同士(個人間売買)で行うことも不可能ではありません。
しかし、みなし贈与等のリスクを回避するために、以下のように専門家を交えて進めるのが一般的です。
▼親族間売買の流れ
- 当事者間の合意形成
売主と買主(親族間)で売買の意思を固める。 - 適正価格の査定
みなし贈与を避けるため、客観的な売買価格を設定する。
※複数の不動産会社や不動産鑑定士に鑑定評価を依頼するのが望ましい - 住宅ローンの事前審査(買主)
買主が住宅ローンを利用する場合、この段階で金融機関に相談する。
親族間売買に理解のある金融機関(信用金庫、地方銀行、フラット35など)に対し、売買の経緯や適正価格の根拠を説明のうえ審査を申し込む。 - 売買契約書の作成
ローン審査と並行して売買価格や引き渡し日などを明記した「不動産売買契約書」を作成する。 - 住宅ローンの本審査・契約(買主)
事前審査が通れば売買契約書を提出して本審査を受ける。承認が下りれば金融機関と金銭消費貸借契約(ローン契約)を結ぶ。 - 決済・登記
金融機関で買主が売主に売買代金を支払い(ローン実行)、同時に司法書士が法務局で不動産の名義を買主に変更する「所有権移転登記」を行う。
親族間売買が難しい場合は任意売却も有効な手段
「住宅ローンの返済が苦しい」「すでに滞納が始まっている」などの理由で親族間売買を検討しているものの、親族がローンを組めない、あるいは資金がないという状況であれば、第三者への「任意売却」を検討するのが現実的な手段です。
任意売却は、競売と比べて以下のようなメリットがあります。
| 競売 | 任意売却 | |
| 売却価格 | 市場価格の5割~7割 | 市場価格に近い金額 |
| 退去 | 強制的に退去の必要あり | 買主との交渉次第で引っ越しまでの猶予ができる |
| プライバシー | ✕(競売物件のサイトに掲載される) | 〇(周囲の人に知られにくい) |
| 引っ越し費用 | 全て自己負担 | 交渉可能(売却代金から捻出できる可能性あり) |
| 残りのローンの支払 | 原則的に一括請求 | 分割の交渉が可能 |
家は手放すことにはなりますが、任意売却をうまく利用することで、売却後の生活債権はスムーズなものとなります。
もし親族間売買での解決が難しい場合は、債権者(金融機関)との交渉や売却活動をサポートしてくれる、任意売却を専門とする不動産会社に相談することが、競売を避けるための次善の策となります。
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まとめ
不動産の親族間売買は、当事者間の合意がスムーズな反面、みなし贈与と住宅ローン審査という2つの大きなハードルが存在する特殊な取引です。
そのため、親族間売買を検討する場合は当事者だけで判断せず、親族間売買の経験が豊富な不動産会社などの専門家に相談し、リスクがないかを確認しながら慎重に進めるようにしてください。
また、住宅ローンの返済困窮により親族間売買を検討しているものの、事情によりそれが叶わない場合、第三者への任意売却も有効な手段です。
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