「自宅が競売になるかもしれない…」そんな不安の中で「現況調査」という言葉を目にすると、一体何が行われるのか、どんな意味があるのかと、さらに心配になる方もいるでしょう。この現況調査は、競売手続きにおいて非常に重要な役割を果たします。
この記事では、競売における現況調査が具体的に何を指すのか、いつ、どのような目的で行われるのかを詳しく解説します。
さらに、調査後の怪しい業者への注意点や、そもそも現況調査を避けるための現実的な対策まで、あなたがこの状況に直面した際に冷静に対応できるよう、知っておくべき情報を分かりやすくお伝えします。
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目次
不動産競売における現況調査の概要
まず、不動産競売手続きの中核をなす「現況調査」とは具体的に何を指すのか、その基本的な意味合いと位置づけについて解説します。
競売の現況調査とは?
競売の現況調査とは、裁判所が競売を申し立てられた物件の現在の状況や価値を正確に把握するために行う、公式な調査です。
これは単なる査定ではなく、法律に基づいて行われる強制執行の一環として実施されます。
その主な役割は、競売物件の「評価書」を作成するための基礎情報を集めることです。
この評価書は、競売物件のいわば「取扱説明書」のようなもので、物件の間取りや広さ、設備の状態、周辺環境、権利関係など、詳細な情報が記載されます。
不動産競売の入札に参加する買受希望者は、この評価書を見て物件の価値を判断するため、現況調査で得られる情報は非常に重要な意味を持つのです。
適正な評価のためには、現状を正確に伝えることが求められます。
不動産競売の現況調査は誰が行う?
現況調査は、主に裁判所の「執行官」と、執行官から依頼を受けた「不動産鑑定士」の二者が連携して行います。
執行官は、裁判所から選任された公務員であり、競売手続き全般の指揮を執ります。現況調査では、現場での調査の主導権を握り、物件の占有状況(誰が住んでいるかなど)の確認や、居住者からの聞き取りなどを行います。
不動産鑑定士は、その名の通り不動産の専門家です。執行官の指示のもと、物件の構造や築年数、内外装の状態、設備、立地条件、周辺の市場動向などを詳細に調査し、専門的な視点から物件の評価額を算出します。彼らが作成する鑑定評価書は、競売価格の基準となります。
このように、執行官が法的・手続き的な側面を、不動産鑑定士が専門的な評価の側面を担当し、協力して現況調査を進めていくことになります。
現況調査はいつ行われる?
不動産競売における現況調査は、裁判所から「競売開始決定通知書」が届いてから、概ね1ヶ月から2ヶ月後に行われるのが一般的です。
具体的な流れとしては、以下のようになります。
- 住宅ローンの滞納が続く:
数ヶ月間の滞納で「期限の利益」を喪失し、金融機関から残額の一括請求が来ます。 - 競売の申し立て:
一括請求に応じられない場合、金融機関が裁判所に競売を申し立てます。 - 競売開始決定通知の送達:
裁判所が競売開始を決定すると、所有者(債務者)に通知書が送られてきます。 - 現況調査の実施:
この競売開始決定通知が届いた後、通常は1ヶ月から2ヶ月程度で、裁判所の執行官と不動産鑑定士が物件の調査に訪れます。調査の日時は事前に書面で通知されます。
現況調査の後の流れ~評価書作成から入札・引渡しまで~
現況調査で得られた情報をもとに、競売手続きはさらに次の段階へと進みます。
現況調査の結果に基づき、不動産評価書が作成される
執行官と不動産鑑定士が行った現況調査の結果や、収集された資料(登記簿謄本、公図など)をもとに、裁判所が不動産の「評価書」を作成します。
この評価書には、物件の概要、間取り、設備状況、損傷の有無、立地、周辺環境などが詳細に記載され、競売の基準となる「最低売却価額」が定められます。
競売の3点セットとは
不動産競売では、買受希望者が物件の情報を詳細に把握できるよう、以下の3つの重要書類がセットで提供されます。これらは、現況調査の結果などを基に作成されます。
| 書類名 | 作成者 | 主な内容 |
| 物件明細書 | 裁判所(執行官) | 物件の所有関係・占有者・賃借権の有無・引渡義務の有無などが記載されている「法的情報一覧」 |
| 現況調査報告書 | 裁判所(執行官) | 建物の利用状況、占有者、建物や土地の状態、写真などが掲載されている「現地レポート」 |
| 評価書 | 不動産鑑定士(評価人) | 市場価値を算出した書類で、売却基準価額(最低入札価格)の根拠を算出する「価格査定書」 |
入札期間の設定と最高価買受人の決定
評価書が完成すると、裁判所によって入札期間が設定され、一般の買受希望者が物件に入札を行います。
入札期間が終了した後、最も高い金額で入札した人が「最高価買受申出人」、つまり落札者として決定されます。
売却代金の納付と所有権の移転、明け渡し
落札者が決定した後、裁判所が定めた期日までに、落札者は売却代金を裁判所に納付します。この代金が納付されると同時に、物件の所有権は元の所有者から落札者へと移転します。
所有権が移転した後、元の所有者には物件を明け渡す義務が生じ、交渉に応じない場合は最終的に強制執行による立ち退きが行われることになります。
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現況調査の具体的な内容と見られるポイント
実際に自宅で行われる現況調査では、以下のようなポイントが見られます。
| 確認ポイント | 詳細 |
| 物件内部の確認 | 各部屋の間取り、広さ、キッチンや浴室などの設備の状態壁や床の損傷、劣化、カビ、雨漏りの跡などの目視確認リフォームの有無やその内容物件の状況を記録するための写真撮影 |
| 周辺環境と外部の確認 | 物件周辺の道路状況、交通アクセス、騒音、日当たり学校、病院、商業施設などの近隣施設や、嫌悪施設の有無建物の外観、敷地の状況、庭などの状態 |
| 占有状況の確認 | 現在物件に住んでいるのが所有者か賃借人か不法占有者がいないか賃貸借契約の有無や内容など、占有権限に関する情報の収集 |
物件内部の確認:写真撮影と状態チェック
現況調査では、執行官と不動産鑑定士が実際に物件の内部に立ち入り、細部にわたってその状況を確認します。これは、競売物件の正確な価値を評価するために不可欠なプロセスです。
各部屋の間取り、広さ、設備(キッチン、浴室など)の確認
まず、図面と実際の部屋の配置や広さが一致しているかを確認します。
キッチン、浴室、トイレといった水回りの設備は、その種類、製造年、故障の有無などもチェックされます。エアコンや給湯器などの主要な設備も同様に確認の対象です。
これらの設備が古ければ評価が下がる傾向にあり、新しければ評価が上がる可能性があります。
室内の損傷、劣化状況、リフォームの有無などの目視確認と記録
壁や床の傷、汚れ、カビ、雨漏りの跡、シロアリ被害の有無など、建物の劣化状況が細かく目視で確認されます。
また、過去にリフォームやリノベーションが行われている場合は、その内容や実施時期もヒアリングされ、評価に反映されます。これらは建物の維持管理状態を測る重要な指標です。
物件の状況を把握するための写真撮影(居住者のプライバシーへの配慮)
調査の際には、物件の内部や外部の状況を記録するため、写真撮影が行われます。これは評価書に添付され、買受希望者が物件の状態を把握するための重要な情報となります。
居住者のプライバシーには配慮されることになっていますが、生活感のある状態がそのまま撮影される可能性もあります。
周辺環境と外部の確認:立地条件と周辺状況
物件内部だけでなく、その立地や周辺環境も評価額を左右する大きな要因となるため、詳細に確認されます。
物件周辺の道路状況、交通アクセス、騒音、日当たりなど
物件が接している道路の幅員や舗装状況、公共交通機関(駅やバス停)からの距離、周辺の交通量による騒音の有無、そして日当たりの良し悪しなど、住環境に直結する要素が評価されます。
幹線道路沿いであれば騒音が懸念され、駅から近ければ利便性が評価されるなど、プラス面とマイナス面が総合的に判断されます。
近隣の施設(学校、病院、商業施設など)や嫌悪施設の有無
生活に密着した施設、例えば小学校や中学校、病院、スーパーマーケット、コンビニエンスストアなどの有無や距離も評価ポイントです。これらが充実していれば評価は高まります。
一方で、工場やゴミ処理施設、墓地など、住環境として敬遠されがちな「嫌悪施設」が近くにある場合は、評価が下がる要因となることがあります。
建物の外観、敷地の状況、庭などの確認
建物の外壁のひび割れや汚れ、屋根の損傷といった外観の状態、敷地の広さや形状、傾斜なども確認対象です。
庭がある場合は、その手入れ状況や植栽なども見られます。これらは、物件の第一印象を左右し、買受希望者の判断材料となります。
占有状況の確認:居住者や権利関係の把握
現況調査では、誰がその物件に住んでいるのか、その権利関係はどうなっているのかといった「占有状況」も非常に重要な確認ポイントです。
これは、落札後の引渡しがスムーズに行われるかどうかに直結するため、買受希望者にとって大きな関心事だからです。
誰がその物件に住んでいるのか(所有者自身か、賃借人かなど)
調査員は、現在物件に居住しているのが所有者本人なのか、それとも賃貸借契約を結んでいる賃借人なのかを確認します。
所有者が居住している場合と賃借人が居住している場合では、競売後の引渡し手続きの難易度が異なるため、重要な情報となります。
不法占有者がいないか、占有者の意思確認
物件内に、何の権利もなく住み着いている不法占有者がいないかも確認されます。
また、居住者がいる場合は、その人が任意での明け渡しに応じる意思があるか、あるいはどのような条件であれば立ち退きに応じるかといった意向も聞き取られることがあります。
賃貸借契約の有無や内容など、占有権限に関する情報の収集
もし賃借人が住んでいる場合は、賃貸借契約の有無やその内容(家賃、契約期間、敷金の有無など)が確認されます。
賃借人の権利が法的に保護される「対抗力のある賃借権」が存在するかどうかは、落札後の買受人の負担に関わるため、特に重要な情報となります。
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現況調査は阻止できる?
「できれば現況調査に来てほしくない」と考える方もいるでしょう。
しかし、現況調査は、裁判所からの命令に基づいて行われる強制調査であり、債務者が拒否することは原則としてできません。
正当な理由なく拒否した場合、執行妨害とみなされ、法的な問題に発展する可能性もあります。
現況調査への協力は、心理的な負担が大きいですが、調査に協力することで、スムーズに手続きが進み、物件の適正な評価につながる可能性もあります。
評価額が適正であれば、競売価格が不当に安くなるリスクを減らせるかもしれません。
調査を回避する唯一の方法:競売手続きの停止
現況調査を回避できる唯一の方法は、競売手続き自体を停止させることです。
これは、競売の申し立てを取り下げてもらう、または任意売却が成立し、債権者全員の同意を得て手続きが終了するなどのケースに限られます。
そのためには、早期に弁護士や任意売却の専門家と連携し、競売開始決定通知が届いたらすぐに具体的な行動を開始する必要があります。
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まとめ
競売における現況調査は、避けられない法的手続きの一部です。
しかし、その内容や目的を正しく理解し、焦らず冷静に対応することが非常に重要です。
現況調査は、競売手続きを進める上で不可欠な評価のために行われます。調査のタイミングや内容を把握し、来るべき変化への準備を進めることが大切です。
現況調査自体を阻止することは困難ですが、競売を回避するための「任意売却」という選択によって、競売自体を回避することができます。
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