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個人再生で住宅ローンはどうなる?特則の利用条件や注意点とは

個人再生で住宅ローンはどうなる?特則の利用条件や注意点とは

個人再生における「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」の適用は、自己破産によるご自宅の処分を避けつつ、債務問題の根本的な解決を目指すことができます。

この記事では、個人再生がご自宅の住宅ローンに与える影響、そして住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の厳格な利用条件と注意点について、解説します。

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目次

個人再生とは

個人再生とは、借金問題に苦しむ方が、裁判所の関与のもとで借金を大幅に減額し、その減額された借金を原則3年(最長5年)で分割返済していくことで、経済的な立て直しを図る法的な手続きです。

自己破産のように借金がゼロになるわけではありませんが、自宅や車などの財産を残せる可能性がある点が大きな特徴です。

個人再生を利用できる人の主な条件

個人再生は、全ての人が利用できるわけではありません。

以下の条件を満たす必要があります。

  • 継続的または反復した収入の見込みがあること
    会社員、公務員、パート・アルバイト、自営業者など、将来にわたって安定した収入を得られる見込みがあることが必須です。
    減額された借金を計画通りに返済していく必要があるため、収入が全くない方や不安定な方は利用できません。
  • 借金総額が5,000万円以下であること
    住宅ローンなど、自宅の維持に必要な債務を除いた「無担保の借金総額」が5,000万円以下である必要があります。
    これを超える場合は、個人再生の対象外となります。
  • 過去の債務整理歴
    過去に自己破産や個人再生の経験がある場合、前回の免責決定や再生計画認可決定から一定期間(通常は7年程度)が経過している必要があります。

個人再生手続きの基本的な流れ

個人再生の手続きは、一般的には、以下のような流れで進行します。

  1. 弁護士や司法書士に相談・依頼
  2. 裁判所への申立て
  3. 再生計画案の作成・提出
  4. 債権者集会(意見聴取)
  5. 裁判所の認可決定
  6. 減額された借金の返済開始

まず弁護士や司法書士といった専門家に相談し、ご自身の状況で個人再生が最適な選択肢であるか、また利用条件を満たしているかなどを判断してもらうことから始まります。

専門家への依頼が完了すると、通常、債権者からの督促や取り立てが停止し、落ち着いて手続きを進めることが可能になります。

次に、申立書や必要書類を作成し、それを添えて裁判所に個人再生の申立てを行います。

裁判所とのやり取りを経て、減額される借金の割合や、今後どのように返済していくかという「再生計画案」を作成し、裁判所に提出することになります。

この計画案について、債権者が意見を述べる場が設けられることもありますが、実際に債権者が集まることは多くありません。

最終的に、裁判所が提出した再生計画案が適切であると判断すれば、認可決定が下されます。

この認可決定をもって、減額された借金を、原則3年間(最長5年間)にわたって毎月分割で返済していく生活がスタートします。

この一連の手続きを通じて、多額の借金から解放され、無理のない返済計画で経済的な再建を図ることが可能となるのです。

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個人再生すると住宅ローンはどうなる?

まず、最も重要な点として明確にしておくべきは、住宅ローン特則は、住宅ローンの「元金」自体を減額する制度ではないということです。

消費者金融からの借金やクレジットカードのリボ払いなど、他の「無担保債務」は、個人再生によって大幅に減額されます(原則5分の1、または100万円のいずれか多い方まで)。

しかし、住宅ローンについては、自宅に抵当権が設定されている特殊な債務であるため、この特則を利用しても、住宅ローンの残高(元金)は一切減額されません。

つまり、あなたは減額された他の借金に加えて、これまで通り住宅ローンの残高全額を支払い続ける義務を負います。

ただし、次で説明する「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を利用することで、住宅ローンの「返済方法」を変更したり、不動産の所有権を手放さずに維持できる可能性があります。

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住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは

住宅ローン特則は、個人再生の手続きをしても、住宅ローンだけは減額せずにそのまま支払い続けることで、大切な自宅を手放さずに済むようにするための特例です。

通常、債務整理を行う場合、全ての債権者(お金を貸している人や会社)は平等に扱われ、原則としてすべての借金が整理の対象となります。

しかし、住宅ローン特則を適用することで、消費者金融やクレジットカードのリボ払い、車のローンなど、住宅ローン以外の借金は大幅に減額される一方で、住宅ローンはこれまで通り返済を継続することが認められます。

この特例の最大の目的は、多額の借金に苦しむ債務者が、生活の基盤である「住まい」を失うことなく、経済的な再建を図れるようにすることです。

特則を利用できる条件

住宅資金特別条項(住宅ローン特則)を利用するには、以下すべての条件を満たす必要がります。

  1. 住宅ローンが「居住用不動産」の購入・建築資金であること
  2. 自宅に住宅ローン以外の担保が設定されていないこと
  3. 住宅ローンが「滞納中」または「代位弁済から一定期間内」であること
  4. 過去に住宅ローン特則を利用していないこと
  5. 安定した収入があり、減額された債務と住宅ローンを返済できる見込みがあること

①住宅ローンが「居住用不動産」の購入・建築資金であること

この特則の最も基本的な条件は、その住宅ローンが債務者自身(あなた)が居住する目的の建物とその敷地の購入費用、または建築費用として借り入れたものであることです。

例えば、投資用として購入したマンションやアパート、別荘などのセカンドハウス、あるいは店舗や事務所など事業用の不動産は、原則として住宅ローン特則の対象外となります。

②自宅に住宅ローン以外の担保が設定されていないこと

住宅ローン特則を利用するには、あなたの自宅に、住宅ローン(一番抵当権)以外の債権のための抵当権(二番抵当権など)が設定されていないことが条件となります。

例えば、住宅ローンとは別に、消費者金融や知人からお金を借りる際に、自宅を担保に入れてしまっているようなケースは、原則として住宅ローン特則を利用できません。

複数の債権者が担保権を持っている場合、個人再生の手続きにおいて全員の同意を得ることが非常に難しくなるため、特則の適用が認められません。ご自身の自宅の登記簿謄本を確認し、抵当権が何件設定されているかを確認しましょう。

③住宅ローンが「滞納中」または「代位弁済から一定期間内」であること

住宅ローン特則は、住宅ローンの返済が困難になっている状況を救済するための制度です。そのため、住宅ローンが現在滞納しているか、あるいは滞納によって次の段階に進んでいる必要があります。

最も重要な条件の一つが、住宅ローンの保証会社があなたに代わって金融機関にローンを支払った「代位弁済(だいいべんさい)」から6ヶ月以内に、個人再生の申立てを行う必要があるという点です。

代位弁済が行われると、あなたの債務者(お金を請求する相手)は金融機関から保証会社に代わりますが、この期間を過ぎてしまうと、住宅ローン特則は原則として利用できなくなります。

保証会社は、この期間を過ぎれば速やかに競売手続きを進めやすくなります。

仮に既に競売が裁判所に申し立てられている状況であっても、代位弁済から6ヶ月以内であれば、個人再生の申立てによって競売手続きを一時的に中止させ、特則を利用できる可能性が残されています。

ただし、この場合、時間的猶予は非常に短いため、迅速な対応が不可欠です。

④過去に住宅ローン特則を利用していないこと

住宅ローン特則は、原則として「人生で一度しか利用できない」制度です。

過去に個人再生の申し立てを行い、住宅ローン特則を利用して自宅を守った経験がある場合、再び住宅ローン特則を利用して二度目の個人再生を行うことはできません。

⑤安定した収入があり、減額された債務と住宅ローンを返済できる見込みがあること

個人再生全体の利用条件でもありますが、特に住宅ローン特則を利用して自宅を残す場合、この条件は非常に重要になります。

減額された他の借金(例:消費者金融からの借金)に加えて、減額されない住宅ローンの返済も継続していく必要があります。

そのため、個人再生計画を裁判所が認めるには、今後も安定的かつ継続的に収入を得る見込みがあり、計画通りに返済していけるだけの十分な能力があることが必須です。

会社員や公務員のように毎月安定した給与がある場合は認められやすいですが、自営業者で収入が不安定な場合などは、収入の安定性を証明するための資料(過去の確定申告書など)を多く提出したり、慎重な計画を立てたりする必要があります。

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個人再生で住宅ローン特則を利用するメリット

個人再生で住宅ローン特則を利用するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 自宅を手放さずに借金問題を解決できる
  • 住宅ローン以外の借金が大幅に減額される
  • 住宅ローンの返済負担を軽減できる(返済方法の調整)
  • 債権者からの督促・取り立てが止まる

住宅ローンを抱えながら多額の借金に苦しむ方にとって、個人再生、特に住宅ローン特則の利用は、非常に強力な解決策となり得ます。自己破産では自宅を失うという大きな代償が伴いますが、個人再生(住宅ローン特則)は、以下に示すように、借金問題を解決しつつも、生活の基盤を守るための大きなメリットを提供します。

①自宅を手放さずに借金問題を解決できる

これが、個人再生(住宅ローン特則)を利用する最大のメリットであり、自己破産との決定的な違いです。

自己破産を選択すると、原則として自宅は換価(現金化)され、債権者への弁済に充てられるため、自宅を失うことになります。

しかし、住宅ローン特則を利用すれば、住宅ローンを支払い続けることで、住み慣れた自宅を手放すことなく、借金問題を整理し、生活の再建を目指すことが可能です。

②住宅ローン以外の借金が大幅に減額される

住宅ローンは減額されませんが、それ以外の借金については、個人再生によって劇的に減額されます。

消費者金融からの借金、クレジットカードのリボ払いやキャッシング、自動車ローン(車に担保がなければ)など、住宅ローン以外の無担保債務が、原則として5分の1(または100万円のいずれか多い方)まで大幅に減額されます。

③住宅ローンの返済負担を軽減できる(返済方法の調整)

住宅ローン特則は、住宅ローンの元金自体は減額されないものの、その返済方法を柔軟に調整できる点が大きなメリットです。

これにより、他の債務整理後の返済計画と両立しやすくなり、月々の負担を軽減することが可能になります。

(1)一括請求された住宅ローンを分割で返済できる

住宅ローンの滞納が続き、「期限の利益」を喪失して一括返済を迫られている場合でも、住宅ローン特則を利用することで、この一括請求をリセットし、再び分割払いに戻すことが可能になります。

(2)住宅ローンの返済期間を延長できる

個人再生の再生計画(原則3年、最長5年)と並行して住宅ローンを返済していく中で、月々の返済額が過大な負担となるケースもあります。

住宅ローン特則では、住宅ローンの最終返済期限を最長10年まで延長できる可能性があります。

(3)返済額を一時減額できる(元金猶予期間の設置)

 一時的に収入が減少したり、まとまった支出があったりして、支払いの目処が立たない場合は、「元金猶予期間併用型」と呼ばれる特則を利用できる可能性があります。

これは、再生計画の弁済期間中(3〜5年)において、住宅ローンの元金返済を一時的に据え置き、利息のみの支払いにしてもらうというものです。

④債権者からの督促・取り立てが止まる

多重債務者が最も精神的に苦しむのが、債権者からの度重なる督促や取り立てです。

個人再生の申立てを弁護士や司法書士に依頼し、弁護士等が債権者に「受任通知」(債務整理の依頼を受けたことを知らせる通知)を送付した時点から、全ての債権者からの電話や書面による督促、自宅訪問などの取り立てが法的に停止します。

精神的なプレッシャーがなくなり、着いた環境で、今後の生活再建計画や返済プランなどを考えることができるでしょう。

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個人再生で住宅ローン特則を利用するデメリット(注意点)

個人再生で住宅ローン特則を利用するデメリット(注意点)には、以下のようなものがあります。

  • 住宅ローンは減額されないため、返済は続く
  • 住宅ローン残債額によっては個人再生できないこともある
  • 個人再生後、しばらくは新規ローンを組めない
  • 官報に掲載される
  • 再生計画通りに返済できないと自己破産に移行するリスク

①住宅ローンは減額されないため、返済は続く

個人再生の大きなメリットとして「借金が大幅に減額される」点を挙げましたが、これは住宅ローン以外の債務に限られます。住宅ローンの元金自体は、個人再生(住宅ローン特則)によって一切減額されません。

住宅ローンは、抵当権(担保)が設定された特殊な債権であり、その担保権は他の無担保債権者よりも優先して返済を受けることができる強力な権利です。

住宅ローン特則は、この抵当権者が権利を行使する(競売にかける)のを制限できる特例ですが、その代償として、契約上の支払い総額を保証することが、返済条件の見直しを認めるための最低条件となります。

②住宅ローン残額によっては個人再生できないこともある

個人再生は、自己破産よりも多くの金額を債権者に返済することで、自宅などの財産を残せる制度です。

そのため、債権者にとって、自己破産された場合よりも回収できる金額が少なくなるのであれば、個人再生に同意するメリットがありません。

個人再生においては、債務が減額される最低金額が「清算価値(自己破産した場合に債権者が得られる配当見込額)」を下回ってはならないという「清算価値保障の原則」があります。

例えば、住宅ローン残額が非常に少ない一方で、他に多額の借金がある場合、自己破産しても自宅以外に処分できる財産が少なく、債権者への配当見込額(清算価値)も低いことがあります。

しかし、住宅ローン特則を利用して自宅を残すと、その自宅の価値が清算価値に影響しないため、他の債務の減額幅が清算価値を下回ってしまうことがあります。

このように、住宅ローン残額が少額で返済に行き詰まっているケースでは、個人再生をしても他の借金がほとんど減額されない、つまり個人再生をする意味がないという状況になることがあるため注意が必要です。

③個人再生後、しばらくは新規ローンを組めない

個人再生を利用したという事実は、あなたの信用情報が登録されている信用情報機関に「事故情報」(異動情報)として登録されます。これは、一般的に「ブラックリストに載る」と言われる状態です。

この事故情報は、個人再生の認可決定後、または手続き開始後、通常約5年〜10年間登録され続けます。この期間は、あなたの金融取引が大幅に制限されます。

この記録が残っている間は、新たな住宅ローンはもちろん、自動車ローン、教育ローン、カードローンなどの借り入れが非常に困難になります。クレジットカードの新規作成や更新も拒否されるでしょう。

④官報に掲載される

個人再生手続きの特定の段階(開始決定、書面決議の確定、認可決定など)で、あなたの氏名、住所、事件番号などの情報が、国の機関紙である「官報」に掲載されます。

官報は一般の人が日常的に目にするものではないため、これによって近所や職場の人に個人再生の事実がすぐに知られる可能性は低いでしょう。

しかし、官報は誰でも閲覧可能な情報であり、一部の金融業者(特に闇金業者など)が官報の情報を利用し、債務整理を行った人に対して電話やDMを送ってくるようなケースもあります。

⑤再生計画通りに返済できないと自己破産に移行するリスク

裁判所に認可された「再生計画」は、法的な拘束力を持つものです。あなたは、この再生計画に従って、減額された借金と住宅ローンを、原則3年間(最長5年間)にわたり継続して返済していく義務があります。

もし、病気や失業、収入減などにより、再生計画通りに返済を継続できなくなった場合、個人再生手続きは途中で「破綻」してしまいます。

再生計画が破綻した場合、債権者からの取り立てが再開され、減額される前の借金を一括で請求されるような状況に戻ってしまう可能性が高いです。

その結果、借金問題の解決策として、最終的に自己破産を選択せざるを得なくなるリスクがあります。

このような事態を避けるため、再生計画を立てる段階で、ご自身の収入と支出を厳密に試算し、無理のない、現実的に返済可能な計画を立てることが極めて重要です。

⑥住宅ローンの保証会社が代位弁済している場合の注意点

住宅ローン特則を利用できるための条件の一つとして、「代位弁済から6ヶ月以内」という厳格な期間制限があることを、メリットの項目でも触れました。この期間を過ぎて個人再生を申し立てても、原則として住宅ローン特則は利用できなくなります。

代位弁済が実行されると、住宅ローンの債権者は金融機関から保証会社に変わります。

個人再生手続きにおいては、この保証会社が債権者となり、債権回収を専門とするため、手続き中も計画への同意や、再生計画が破綻した場合の対応などについて、厳しくチェックしてくる可能性があります。

競売が既に申し立てられている場合でも、代位弁済から6ヶ月以内であれば、個人再生の申立てによって競売手続きを一時的に中止させることが可能です。

しかし、この場合、時間的猶予が非常に少ないため、迅速な行動と専門家への相談が不可欠となります。

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まとめ

住宅ローン返済中の個人再生は複雑な手続きではありますが、多額の借金を減らし、住宅ローン特則で大切な自宅を守ることができる手段です。

しかし、申請には時間がかかり、問題が深刻化する前に動くことが肝要です。

弁護士相談費用や仲介手数料など、売却に伴う費用は一切ございません。

「家に住み続けたいが住宅ローンの支払いが厳しい」「競売通知が届いてどうすればいいか分からない」といった様々なご相談に対応しておりますので、お気軽にご相談ください。

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